大坂なおみ選手が2018年の全米オープンを制覇しました。日本人としては史上初の快挙です。
いやいや、アジア選手がテニス4大大会で優勝を飾ること自体、信じられない出来事です。何故かって?欧州特有の身体能力が圧倒的に有利と言われるテニス界ですから、パワーとフィジカル(メンタル)がどうしても追い付きにくかったのです。
過去には伊達公子や杉山愛すら成し遂げられなかったんです。今まで色んな選手が期待されてきたのに、決勝の舞台さえ踏めなかった。。。。それだけに今回の大坂なおみ選手の全米オープン優勝は、寝耳に水の出来事ですよ!
先に10年以上前から期待されていた錦織選手を差し置いての今回の優勝、まるで新人が急に出てきて、優勝をさらったような印象さえ受けます。
しかし、欧州特有のパワーとフットワークが必要なテニスにおいて、日本選手が急に出てきて優勝できるもんでしょうか?今回は、大坂選手が全米オープンで優勝できた理由に言及していきます。
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日本人離れしたパワーを持った大坂選手
まず、最初にはっきり言っておきます。彼女の身体能力は、欧州選手と同等以上の能力を持っていることです。まず、これが今回優勝する上で最も助けとなった部分です。それは父親が中米ハイチ出身ということから、ハーフとして日本人離れしたDNAを引き継いでいることが大きな理由です。
特にパワーに関しては、セリーナと同等レベルのサービス速度と精度を持っていると言っていいでしょう。今までの日本選手は、センスとフットワークは付いていっても、パワーでどうしても引き離されていました。
全米オープンのようなハードコートにおいては、サービスのウェートが大きく結果を左右します。大坂選手は、リトルセレナと言われるほど、サービスに力があります。これは彼女がデビューした2013年から際立っていました。
これは彼女がデビューしたころの率直な私の意見です。
サービスで圧倒できるというのは、自分のゲームを相手に与えにくいということであり、逆に相手のサービスにプレッシャーを
与え続けるという意味でもあります。特に女子テニス界では、男子よりもメンタルが大きく左右します。
その上でサービスはゲームの中で唯一自分のタイミングで打てますので、メンタルを平常に保ったまま、相手にプレスをかけることができるのです。
今までは、優勝に何が足りなかった?
では、逆にこれまで何故グランドスラムで優勝できなかったのでしょう?これほどまでのパワーがあれば、もっと早く優勝できたかもしれません。
こんなこと言うと、いやいや20歳って凄い若いだろうなんて言われる人いると思うんですが、いやいや彼女のプレーを見れば、
グランドスラムといわなくても、ツアー優勝はもっと重ねておかしくないと思います。これは彼女のプレーを見た率直な意見です。
彼女のこれまでのグランドスラムの戦い方を見ていますと、どの選手も彼女のサービスを最も警戒していました。しかし、1,2回戦目の相手には圧倒しても、上位シードと当ると途端にそれだけでは破れなくなります。
勿論、リターンが返ってくるし、スライスなり、リズムを変えてきたり、とにかく粘られてメンタルを揺さぶってくるのです。その時に、彼女自身のプレーが出来なくなったことがほとんどでした。
更に付け加えると、自分のサービスゲームさえ投げ出したかのようにミスを重ねる姿が少なくなかった。
一応、実業団テニス経験者であり、10年以上グランドスラムを観戦させてもらっている自分から言わせてもらうと、彼女の能力からして"まるで投げ出すような試合展開"になってしまうと、歯がゆいゆいこともありましたね。
これはずっと周囲に言い続けてきた言葉です。女子は、身体的に男子よりもフィジカルやメンタルが左右し易い。なので、大きなチャンスは必ずくる。
確かにその通りに、2018年全米は、彼女にチャンスが訪れましたね。でも、チャンスをものにできたかどうかは、彼女が変化を変化を受け入れたからだとみています。
決勝で勝てた要因はメンタル。きっかけはコーチ
いくら、チャンスが訪れたからといって、決勝の舞台で勝つことは、また別問題だ。
あのラファエル・ナダルがウィンブルドン決勝でフェデラーを対峙した時も、最初の2年は決勝で敵わなかった。そして、3度目の決勝でようやくフェデラーを破ったのだ。しかもその決勝も、勝利まであと数ポイントというところで、プレッシャーからダブルフォルトで何度もチャンスをフイにしてセットを落とすぐらい重圧が掛かっていた。
それだけグランドスラムの決勝では、重圧が桁違いに襲い掛かる。
しかし、驚いたのは、大坂なおみは決勝の舞台で自分のプレーに徹し続けたことだ。そのきっかけは、昨年コーチに付いたサーシャ・バジンの影響が大きいだろう。
サーシャは、大坂に、寿司屋のプロ職人のように1球1球魂をこめてプレーしろと、1プレーの大事さを説いた。今までは、試合の流れが相手に傾きかけたり、自分の思うようなプレーが出来ないと、極端にプレーに粗さが目立ったが、2018年の全米は、大会を通して連続して相手にポイントをプレゼントするような粗いプレーが殆ど無くなっていた。
こんなことは普通、容易ではない。何度も観戦している私からしたら、崩れそうだと思わざるを得ない状況だった。
その変化を促したコーチ、そして素直に受け入れた大坂なおみの人間性が、優勝に結び付いたのだろう。セレナがいらだちを抑えきれない場面でも、彼女は冷静だった。
このメンタルの変化は、優勝できた最大級の要因だと言える。
錦織選手に足りないのは何か?
大坂選手がグランドスラムを獲ったとすれば、次に注目されるのは日本男子きっての天才、錦織選手への期待である。
しかし男子テニス界は現在、歴史的にファンタスティックな時代の真っ只中なので、錦織にとってはある意味厳しい時期ではある。錦織だって、何十年に1人の逸材だ。彼のセンスは、フェデラーにだって劣らないと私は断言して言える。
現在のテニス界については、下記記事についても言及しているので、参考にしてほしい。
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正直、BIG4と彼の差は、ほぼ身体的な差だと思っている。ネットが存在するスポーツであるが故、必ず、適切な身長というものは存在する。恐らく185cm~195cmが最も守備範囲が広くサーブが有効に働く身長だろう。逆を言えば、欧州に卓球でアジアに勝てといわれても、難しいと言っているのと同じなのである。ある意味、時代の性に呑まれそうな彼は不運かもしれない。
そんな彼に送るのは、ダビド・フェレールやディエゴ・シュワルツマンなど、錦織より身長が小さくても、闘志を剥き出しにしてかかってくる、そんなメンタルを携えた、不撓不屈の精神を今後も続けて欲しいということである。今、彼に大坂なおみ選手のようなメンタルが無いとは思えない。彼はずっと自分と戦ってきたはずで、ずっとたくましいメンタルを持っているはずです。
私から言えるのは、今後も諦めずに優勝を目指して戦い続けて欲しい、ということだけである。
まとめ
彼女が優勝できた要因は、女子テニス界トップレベルのサーブ力と精度が、彼女を大いに助けたのは間違いありません。特に追い込まれた場面において、何度も200km/h近いサーブを精密にコースに入れてきたのは、相手の戦意を削っていったのは観ててはっきり分かりました。
しかし、今まではそれを続けられなかったので、一番の要因は、メンタルが安定して1球1球魂を込めてプレーした結果でしょう。それは、昨年新しくコーチに付いた、サーシャ・バジンの影響が大きいと思います。彼が、大坂なおみ選手に対して1球1球を大事にしなさい、と適切にアドバイスしたのです。
松岡修造曰く、「この一球は無二の一球なり」
ラファエル・ナダル曰く「どんなポイントもそれが最後のポイントのようにプレーする」
どのトップ選手も、1球の大切を説いています。そこに気付かせたコーチと、素直に受け入れた大坂直美選手。まさに優勝はコーチと選手のタッグの賜物という言葉がぴったりでしょう。
以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。