日本大学アメフト部・日本大学フェニックスのDL(ディフェンスライン)として関西学院大学アメフト部・関西学院大学ファイターズとの定期戦に出場していた宮川泰介選手に起こった悲劇ともいえるタックル問題は、SNSで拡散され衝撃的な事件として大きな問題となっていました。
まだ20歳という若い選手が一歩間違えば大けがとなるような悪質なタックルをしたのはなぜか。
犯罪者としてSNSで拡散された宮川泰介選手が記者会見を開き、当時の監督とコーチからのパワハラ・圧力があったと告白してさらに大きな問題となりました。
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日大アメフト部の反則タックル問題
日本大学フェニックスと関西学院大学ファイターズと言えば、大学のアメフト部の中でもトップを争う強豪校。
その強豪校の試合で宮川泰介選手が行った相手チームのQBの選手へのタックルがあまりにも不自然で、怪我をさせるための悪質な犯罪行為だったとしてSNSで拡散されてしまいます。
確かにスポーツマンとしてとても許される行為ではなく、宮川泰介選手に対する非難は膨らむばかりでした。
宮川泰介選手の謝罪会見
まだ20歳という大学生の宮川泰介選手が大勢の記者を前に開いた謝罪会見で伝えたのは、宮川泰介選手個人の意思ではなく命令に従っただけという思いでした。
その命令を下したのが当時の日大フェニックスの監督とコーチで、逆らえば選手生命の危機となると脅されたというのです。
あまりにも非情な命令を受け、悩みに悩み抜いた結果行動を起こしてしまった宮川泰介選手を加害者という立場に追いやったのは監督とコーチだったとなり、矛先は内田正人前監督と井上奨元コーチに向かいます。
内田前監督と井上元コーチの謝罪会見
宮川泰介選手の記者会見を受け、内田正人前監督と井上奨元コーチが開いた会見では、内田正人前監督はそのようなことは言っていないとし、井上奨元コーチは言ったことは認めつつ監督の指示ではなかったとしています。
「内田監督は井上コーチになんと指示したのか」
記者からのこの問いに対し「普段の練習ですべてのコーチに失敗を恐れるな、と言っている。誰でも失敗はする。失敗を許せ。失敗の次にしっかりやってくれ、と指示している」と答えています。
これは今回の事件とはまったく関係のない答えであり、記者の質問への答えにはなっていないでしょう。
第三者委員会の介入
日本大学側が用意した第三者委員会の調査の結果では、内田前監督の独裁的な世界が原因とするような報告がされていました。
第三者委員会報告格付け委員会
第三者委員会の報告書についてその内容を吟味しランク付けする委員会があることをご存じでしょうか。
その委員会による今回の悪質タックル事件の報告書の評価は8人中7人がDという評価でした。
中間報告書と最終報告書の中で日本大学内部の体制、今後の再発防止に向けた提言などが説明不足だという意見が出され、一番大事な本当の原因を追究することもしていないということが大きな問題となっていました。
日大アメフト部の加害者となった選手、監督、コーチの処分
関西学院大学の被害選手の父親から告訴状が出されたものの、傷害罪で刑事告訴された内田正人前監督と井上奨元コーチについては負傷させるよう指示したという事実が認められないという判断から不起訴となっています。
そして、宮川泰介選手についても被害者側からの温情判決の要請、示談成立を受けて不起訴処分が下されました。
宮川泰介選手の処分
試合後、加害者として有名になってしまった宮川泰介選手ですが、記者会見を開き一転被害者のように扱われるようになっていました。
ただ、宮川泰介選手が行った行為自体は許されるものではなく、日大フェニックスは公式戦への出場が禁止され宮川泰介選手はアメフトを辞める覚悟でいました。
山田正人前監督の処分
事件発生当初から関与を否定していた山田正人前監督は、関西学院大学への謝罪時にも謝罪と辞任の意向を伝えるのみで行為自体についての見解等具体的な説明は一切していなかったようです。
試合後、監督辞意を表明し日大常務理事職の職務停止、謹慎処分を受け、学校側から懲戒解雇された山田正人前監督ですが、不起訴処分を受け解雇無効の裁判の起こし、和解勧告が出され懲戒解雇は撤回されています。
そして、日大に復職した内田正人前監督は職場に復帰することなく、退職申請をし通常退職しています。
通常の退職扱いですから、懲戒解雇と違い勤務期間に対する退職金も支払われての退職をし、その後の消息はわかっていません。
井上奨元コーチの処分
カンニング竹山と対談
日大フェニックスのコーチを辞任し1年7ヶ月経った2019年12月、AbemaTV『AbemaPrime』の独占インタビューに登場した井上奨元コーチがカンニング竹山さんを相手に事件について笑顔で語っています。
事件当初、第三者委員会には1回呼ばれただけですべて結論づけされてしまったといい、メディアに対しても「テレビって最終的に何を伝えたいんかな?」という疑問を持ったといいます。
宮川泰介選手に対して実際に発した言葉
- 「お前関学のQB潰して来いよ」
- 「どうする? 試合出る? 出たいの?」
- 「潰すんやったら出てええよ」
- 「仲良しでやってるんちゃうねんから、本気でやれよ!!」
- 「監督もそうやって言うてんぞ!」
- 「ハングリーにタックルして来い!」
これらの言葉は井上奨元コーチの口からはっきりと自分の言葉として伝えたと語られています。
試合後は「QBを潰して来い」と言ったのは真実だと認めていたものの、「怪我をさせることを目的としては正直言っていない。あくまで選手を鼓舞させるためであって怪我をさせる意図はなかった」と言っています。
宮川泰介選手が言われたとされる言葉
宮川泰介選手が記者会見時に訴えていた井上奨元コーチから言われた言葉とは、
- 「相手選手が怪我をしその後の試合に出られなかったら得だろう」
- 「やらなきゃ意味ないよ」
という言葉でした。
そして試合当日、内田正人前監督に「相手のクオーターバックを潰しにいくので使ってください」と直訴しています。
整列時、念を押したとされる井上コーチ
「出来ませんでしたじゃすまされないぞ、わかってるな」
チームが整列している中、一直線に宮川泰介選手のところに向かう井上奨元コーチの姿が映っているのですが、宮川泰介選手の証言通りに念を押しに行ったという立証にはいたりませんでした。
井上奨元コーチの現在
友人に誘われて就職し、カンニング竹山さんには「日大のアメフト部に戻る気持ちはない」と言っていた井上奨元コーチですが、日大に対して懲戒解雇の撤回を求め提訴し2020年9月に勝訴しています。
懲戒解雇が撤回された井上奨元コーチは、内田正人前監督のように退職を選択するのではなく復職を選択し、現在では日本大学歯学部の学生課に勤務しているようです。
日大フェニックスとしての処分
傷害事件として告訴されたことで2018年度シーズンは公式戦出場資格停止という処分を受けています。
当然、2019年度のシーズンは2部リーグのBIG8リーグに降格してのスタートでした。
そして橋詰功新監督のもと全戦全勝の成績で終え、2020年度はTOP8リーグに昇格しまた全戦全勝でリーグ優勝をしています。
新ヘッドコーチ・平本恵也
3年契約の任期が終了し、現在はXリーグ・アサヒビールのアドバイザーに就任している橋詰功前監督の後任として平本恵也氏が新監督に就任しています。
宮川泰介選手のその後~現在
傷害事件では不起訴処分となり、日大フェニックスに在籍して副キャプテンになっていた宮川泰介選手は、4年生の2019年11月15日横浜国立大学との公式戦で復帰し記者会見にも参加しています。
富士通フロンティアーズ
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2019年は2試合に出場し日大フェニックス全戦全勝に貢献して卒業した後、富士通に入社した宮川泰介選手は総務部に所属して富士通フロンティアーズのDLとして現在も有望な選手としてアメフトを続けています。
まとめ
高校生の時に井上奨元コーチと出会いアメリカンフットボールの世界に入ったという宮川泰介選手。
慕っていた井上奨元コーチからの指示が宮川泰介選手を奮い立たせるためのものだったのか、意図するところがあってのものだったのかその真意は井上奨元コーチにしかわからないでしょう。
わずか20歳の青年が人生を踏み外す行為に至り、犯罪者として日本中から注目をあびてしまった苦悩を思うと、言葉の履き違えで片づけることは出来ないことだと思うと同時にSNSで拡散されてしまう情報社会の怖さも感じてしまいます。
それでも、現役のアメフト選手として有望され活躍している宮川泰介選手の現在に救われる思いです。
事件後、復職せずに退職していった山田正人前監督、日本大学に復職した井上奨元コーチもまたネット社会の被害者になるのでしょうか。